この作品は、某所のフォロワーさん1,200人記念SSでした。

今回のお話は、小牧さん視点です。
ある一日をクローズアップしております。

BGMは ♪嵐「still…」でした♡

前作「約束」に引き続き…なお話になってしまいました。
どうしましたかね?その言葉が好きで仕方ないって感じですか。




上戸な俺の笑えない一日

 

 



今日、俺のバディが復帰する―――

 

 

当麻蔵人先生を巡る裁判は事実上敗訴となり、その日のうちに先生を亡命させる作戦が実行された。綿密に練られた作戦でありながら、どこからともなく情報が洩れ、俺たち図書隊は不利な状況に追い込まれていく。

奇しくも台風が上陸していたその日。

後に聞くと背筋が凍りつくような恐ろしい場面に出くわした、唯一無二のバディと可愛い部下の顛末は、俺の想像を遥かに超えて気持ちを和ませるものとなった。

しかしその過程で受けた代償は大きく、堂上は長期戦線離脱―――いや、離脱くらいで済んで良かった、というのが本音か。

 

とにかく、ヤツが帰って来る。

厳しいリハビリも弱音ひとつ吐かずにやり遂げ、怪我の前の状態に近いところまで回復したと聞いている。それも偏に笠原さんの存在のお陰なのだろうけど。

 

 

数日前からタスク内はソワソワしていた。理由は言わずもがな。

大好きな堂上(おもちゃ)が帰って来るとあって、諸兄たちが浮かれている。そんな姿を見ると微笑ましい。俺も一緒にお祭り気分に浸りたい。

 

「進藤一正、何かお手伝いしましょうか?」

「おっ!小牧~~~~っ!お前も嬉しいよなぁ?こんな目出度いことは早々無いからな」

「・・・復帰祝いだけじゃないんですね」

「ああ・・・あれ?小牧は反対か?」

「いえ、反対ってわけじゃありません。だけど・・・笠原さんを晒し者にするんですか?」

 

俺の一言で事務室内の空気が2度ほど下がったか?

これだから『ブリザード』とか言われちゃうんだよな。反省、反省。

 

「すみません。お祭りムードに水を差すようなこと言いました。大丈夫です。どちらもお祝い事には変わりありませんから、盛り上げましょう!」

「そ・・・そうか?・・そうだよ、な。笠原だって、堂上が帰って来るの嬉しいはずだし。大丈夫だよな」

「ええ。ま、大丈夫じゃないのは、堂上でしょうね。間違いなくキレるでしょう」

 

ニコリと笑ったのに、進藤一正たちは顔を引き攣らせた。

俺、言い方間違えたかな?そんなつもりはないんだけどな。

―――ま、いっか。深くは考えない。

 

みんな、何を作っているのかと思えば、毎度お騒がせの横断幕。言い出しっぺは隊長かぁ・・・っとすぐに影の参謀の姿が見えた。

視覚効果も派手な演出ってのを目指しているらしい。理想は素晴らしいが、発想は古典的で、なぜか俺の笑いと涙を誘う。

どこからこんなデカい布切れを持ってきたんだ?と毎回思わせるし、それに施される墨痕は鮮やかな達筆。一体誰が・・・と真相を知りたいとも思っていた。

この涙ぐましい制作過程を間近で体感できることに喜びを感じ、そしてこの祝いムードは全て俺のバディである堂上へ向けたものなのだ。正直、テンションが上がるのを感じる。

 

「・・・な、小牧。お前もしかして、相当喜んでるか?」

 

それは遠慮気味に。ドキドキが聞こえてきそうな緊張と共に問いかけられた。

事務室内の全員から注目されているのがわかった。

 

「ええ。嬉しいですけど・・・?」

 

これまで生きてきた中で、一番不思議な質問だったことを認めよう。

なぜそんなことを聞かれているのか、謎だった。

 

「あの、俺ってそんなに分かり難いキャラですか」

「いや。いつもこういうことには首を突っ込まないヤツ、ってカテゴリーだな。お前から手伝うなんて声をかけてくるとは思わなかった」

 

進藤一正の言葉に他の隊員たちもうんうん頷いている。

しかも、それはそれは嬉しそうに。

 

「何だか、みなさんの方が相当嬉しそうに見えますが」

「そりゃあそうだろう!やっぱり、小牧は堂上のバディだよなぁ、ってな」

 

 

それきり、みんなは作業に夢中になった。

俺は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。

すごく当然のことをとても嬉しいと表現された。諸兄たち全員にだ。

 

今日までの俺と堂上の時間は、濃密で長いものだったと思ってる。

抗争中も日常的な軽犯罪の捕り物の時も、所謂阿吽の呼吸で窮地を乗り切ったり、スピード解決に導いたり、結果的には思い通りになる最高のバディとの仕事。

それが当たり前のことになっているから、堂上が留守中の自分の身の置き所は、正直居心地の良くない感覚がある。

今までの堂上の被弾の回数を見れば一目瞭然。その居心地の悪い日を過ごすことが何度もあった。あり過ぎて「いい加減にしてよね!」と本人に怒りをぶちまけたのは、本当に若い頃だったな。一人にされる不安に耐えられなかった時期がちょっと懐かしい。

 

最近は大きな怪我も無く過ごしてきた。だから気持ちに油断があったのは許してほしい。

あの日―――あの台風の日。

作戦とは言え、堂上と離れて行動することに一抹の不安があったのを覚えてる。

堂上のバディが笠原さんだったからとか、当麻先生を任せたからとか、そういうことではない。どんな状況に陥ったとしても、堂上のバディとして自分が傍にいることが出来たら、言いようのない後悔はしなかったと思う。

 

 

 

――悔しかった

 

こんなことを言ったら、堂上は引くかな。

俺は、笠原さんに嫉妬したんだ。

 

堂上のバディは俺だ。誰がなんと言おうと。

 

誰かに吐き捨てた気持ちは、そのまま時空を彷徨っている。

明らかな「先」があるのに届かない。

そんな思いのままバディを失った日々を過ごして、漸く復帰の時を迎えた。

 

嬉しくないはずがない。

それを隠そうとも思わない。

 

――そんな俺を見て、あの人たちが喜んでる?

 

 

タスクの諸兄たちの温かな気持ちは、堂上の代わりに俺が素直に受け取っておこう。

 

 

 

◆◆

 

 

「小牧ぃぃっ!!」

 

あはは。怒ってる怒ってる♪

 

「何で止めなかったんだっ!」

「えー?止められると思うの。あの人が言い出しっぺだよ?」

聞こえてきた大きな笑い声の方向を指さしてやると、眉間の皺はますます深くなった。

「ね、ね、見た?『&』のとこ俺も手伝ったんだよ♪」

「・・・おい。そこも止めなかったのか」

「んー。ごめんね。楽しそうに作ってて。ちょーっと興味あったから」

 

堂上はちょっと驚いて、それから不本意って顔で言葉を呑んだ。

俺の気持ち、わかってくれた。だから何も言えなくなっちゃったんだよね。

そういうとこ、本当に堂上は優しいよね。

 

 

 

 

復帰初日は館内警備。

堂上と俺がバディを組んだ。素直に嬉しいと思っていたけど、堂上は本当は笠原さんと組みたかったのかな。みんなに揶揄われたから遠慮したのかな。

・・・なんて、ちょっと卑屈になってる自分がいる。

 

「ホント、久しぶり過ぎて緊張しちゃうな」

「・・・おい、どうした」

「え?何が」

「お前・・・浮かれてないか?」

 

まさかその言葉を堂上から聞くなんて思いもしなかった。

そして何故か、少しだけ拗ねたい気分になった。

 

「お前だって浮かれてない?久しぶりのタスクにテンション上がらなかった?」

「そ、そりゃあ・・・まぁ・・・」

「でしょー?それと同じだよ」

 

――ちょっと違うけどね

 

「入院中のことは色々聞いてたが、やっぱり体感すると感じ方も違うし。まず、空気がなぁ、みんなと同じ空気を吸ってる感じが堪らんな」

「・・・へえぇぇぇぇ!」

「なんだよ。意味深だな」

「随分と素直に感想を言えるようになったもんだな、と思ってさ。それもこれも全部、誰かさんのお陰なんだね~」

「・・・っ!何とでも言え!」

 

くくく・・っと喉で笑ってみたけど。何だかちょっぴり物足りない。

素直な堂上。いいじゃない。本来のお前はそういうヤツだったよ。人間味が溢れてて、周りを惹きつける、本当に魅力的な男として存在してた。

だけど――そういうお前は過去の姿で。その姿を可愛い部下たちは知らなかったはずで。

 

――お前は、そんな過去の自分も、笠原さんには見せていくのかな?

 

 

 

また、台風の風が心の中で暴れ始める。

視界を遮った横殴りの雨と、当麻先生を守る背中。

思わず手を伸ばそうとして、何度も夢から覚めた。

結果、バディを失うことにはならなかったのに、恐怖はいつまでも残っていて。トラウマなのかな?とも思えるくらいに夢を見ることを繰り返した夏。

 

だけど、俺以上にもっと笠原さんは辛いだろうと、上官の矜持ってやつで大丈夫なフリをした。

面白いくらい、俺と笠原さんは同じ日に寝不足気味だった。それは俺と笠原さんが同じ傷を抱えている証拠だ。そして同等の立場になったのだと思い知った。

言いようの無い焦りと、胸を痛める寂しさと、堪えられない想いが俺を支配する。

 

 

こんな上官、嫌だよね。

俺って心が狭いよね。

全くもって男らしくないよね。

 

 

 

 

「小牧?」

「・・・ん?」

「大丈夫だったか?・・・って、話、聞いてたか?」

「あー。ごめん。何?」

「だから、お前は雨とか台風とか、あの後、大丈夫だったか、って聞いたんだ」

 

思わず仰け反ってしまった。

俺、笠原さんみたいに思考がダダ漏れてた訳じゃないよね!?

 

「やっぱり、何かあったか」

「・・・やっぱり?」

「お前、雨の日は見舞いに来なかったし。その翌日に顔見ると、かなり疲れてるみたいだったから、眠れてないんじゃないかと思ってた」

「わー!すごいね、班長!」

「茶化すなっ!」

「ははは!茶化してないよ、ホントに。そうか、病院で仕事出来ない状態だと、普段の有能さを他で発揮できるんだね」

「馬鹿にしてんのか!」

「・・・どうかな?」

 

ちょっとふざけてそう返せば、堂上は俺の後頭部を飛びつく勢いで掴んで抱え、無理矢理なヘッドロックでグリグリと攻撃してくる。

この身長差でこれって、傍から見たら可笑しいよね。

 

でも・・・くくくっ・・・

こんなのも嬉しいとか、もう俺もどんだけだよって思うよ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

昼休憩は、堂上班揃って隊員食堂へ。

柴崎さんも合流するかと思ったら、イベントの準備で忙しいとか。

ここは・・・手塚がガッカリなのかな?

 

 

「わー!教官復帰の日にアジフライとか、なんて強運なんでしょう!」

「おい、こら。それ、俺の復帰と関係あんのか!」

「えー?関係あることにしてくださいよぉぉ」

「なんだそれ」

 

付き合い始めて間もないし、更に今日まで仕事場で離れ離れだった二人。距離感が以前と変わらない感じが微笑ましい気もする。

こんなじゃれ合いを晒していたら、他の奴らは気付かないだろう。二人が恋愛成就したことを。

 

「はいはい。いいから早く堂上はA、笠原さんはBでしょ。ほら、席が埋まっちゃうよ」

 

半ば強引に二人の間に割って入って、天然バカップル劇場を中断させてやる。

決して嫌がらせではないよ。そこのところ、強く言いたいけども。

 

席に着いた途端、堂上が固まっている様子。どうしたことかと見ていると、笠原さんが「きっとお祝いですよ」と笑顔で呟いた。

堂上のトレーにデザートが乗っていた。笠原さんのトレーにも同じものが乗っている。

なるほど。堂上は笠原さんにデザートを横流しする気満々だったのに・・・ということか。

そして、笠原さんが言わんとしたこと・・・おまけのデザートは、食堂のおばちゃん達から、堂上への復帰祝いだと。そういうことだね。

 

「しかし、俺は笠原に横流しするんだから、お祝いならデザートじゃないだろ」

「いや、堂上。見事なチョイスだと思うよ。おばちゃん達、堂上が喜ぶことを考えてくれたんだよ。お前いつも、それはそれは嬉しそうに笠原さんにデザートあげてたからね」

 

言ってやれば堂上は真っ赤になり、笠原さんは振り返る。おばちゃん達が笑顔で手を振ってこちらを見ていたので、それに応えて手を振り返し「ホントだ。小牧教官、正解です」と嬉しそうに笑った。

 

そうなればもう、バカップルの独壇場。堂々と彼女に餌付けをする堂上は、これまでも何度も見てきたのに何故か新鮮で。また一からこの甘さを堪能しなければならない状況を予想したら、美人な魔女が「このバカップルめ!」と呟くのが目に浮かんで可笑しくなった。

 

 

 

「あのぉ。教官たち、今夜って予定あります?」

 

そろそろお茶も終わって午後の業務の準備に入ろうか、という時、笠原さんが遠慮気味に伺ってきた。

 

「今夜?」

「はい。教官の復帰祝いを堂上班だけでやりませんか?」

「俺も思ってました。タスク全体でもやると話してましたが、とりあえず今日は班だけで」

「ん、いいんじゃない?ね、堂上」

「ああ。別に用事は無いな」

「わー!よかったぁ。じゃ、いつものとこ、予約入れておきますから!」

「うん、頼むね」

 

 

どちらにしても、今夜は堂上と飲むつもりだった。ま、恒例の部屋飲みだけど。

でも笠原さんにしてみたら、今日は少しでも長く堂上と居たいよね。うん、わかる。

 

俺は物分かりのいい上官って態を貫いてるつもりだった―――

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

寮のロビーで待ち合わせして、4人で連れ立って建物を出ると、笠原さんが俺を小さく呼んだ。

 

「小牧教官。今日はごめんなさい。教官と二人で部屋飲みの予定じゃなかったですか」

「え、いや。特に予定は・・・」

「そうですか?それならいいんですけど」

「笠原さんこそ。今夜は堂上と二人でゆっくりして来たらよかったのに」

「いえ、それは次の公休日に、で、で、デート、の約束してます、から」

 

急に会話が硬くなる笠原さんに、俺はどうしても笑みが隠せない。

 

「そっか。やっとデートできるんだもんね。それは楽しみだね」

「・・・はい。外出できるようになって、良かったです」

 

そう言って笠原さんは、数メートル先を行く堂上の足を見つめていた。

彼女の脳裏に焼き付く映像は、どんなものなんだろう。想像を絶する。

 

「こうやって、堂上班で動けるのも久しぶりで。すごく嬉しいです」

「・・・そうだね」

「でも、教官たちの時間を作ってあげたいと思うので!」

「は?」

「へへ・・・ 手塚っ!」

 

笠原さんが呼ぶと手塚は足を止めて振り返り、彼女とすでに意思の疎通ができているようで、二人は並んで「先にお店に行ってます!」と敬礼して競うように急ぎ足で行ってしまった。

 

 

「・・・なんだ、あれ」

「んー。俺と堂上の二人だけの時間を作ってくれたみたいだよ?」

「なぜ」

「さあ?でも・・・可愛い部下たちだね」

 

俺の言葉に返事はしない。代わりに堂上は微笑んで地面を見つめた。

 

「なーんか、妬ける」

「は?」

「俺、今日だけでも、何度も笠原さんに嫉妬した」

「・・・どうした、小牧」

 

俺は歩き出しながら「行こう」と堂上に並んで歩くことを促した。

 

 

 

「俺さ、実はあの亡命の日からずっと、笠原さんに嫉妬してたみたいなんだよね」

「だから、なんでお前が―――

「あの日のお前のバディが笠原さんだったからだよ」

 

言ってしまえば、なんてつまらないことだ――と感じた。

 

「できることなら、戻れるなら、あの日も俺がお前のバディで、先生を送り届ける役目を一緒にしたかったし、お前と一緒に戦いたかった」

「小牧―――」

「笠原さんがさ、成長した姿を見せてくれたことはすごく嬉しいよ?お前と一緒に育ててきたって思ってるからさ。だけど、彼女の成長と、お前のバディを譲るのとは、全然別の話で。上手く言えないけど・・・成功させてしまった彼女に、その場所を取られたような気分だった。もうこれから先、お前にバディとして選ばれないんじゃないか、って」

「それは有りえん!」

 

堂上の強い否定の言葉に、俺は少し驚いた。

言葉を詰まらせた俺を射抜くように見ると、堂上は不意に視線を外して「有り得ない」ともう一度呟いてから、訓練速度に歩みを変えた。

 

せっかく用意してくれた時間をその後無言で歩き通して、部下の待つ店に着いた―――

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

個室に入ると、キラキラした瞳で俺を見る笠原さんが居た。

少し後ろめたくて、不自然にならないように視線を外した。

 

テーブルを挟んで、対面に部下の二人が座ることにしたらしい。

いつもの食堂の位置とは違っていた。

自然に、俺の隣に堂上が座る。これも先ほどの気遣いの延長なんだろうね。

 

俺たちが座るのを確認して、堂上は立ったままで「聞いてくれ」と話し始めた。

 

 

「今日は堂上班の飲み会ってことだから、お前たちにまず話をさせてくれ。

長いこと現場を離れて申し訳なかった。こんなに復帰までに時間がかかったのは俺自身初めてで、正直、本当に戻れるのか不安もあった。班長なのにお前たちに全面フォローしてもらって、情けないことこの上なかったが、感謝してる。

この足が使い物にならないって言うなら仕方ないとも思ったが、幸い支障なくタスクの仕事が出来ると言われて、俺の戦闘職種としての寿命が延びた。だからこの先、今まで以上に遊撃班として役に立って、タスクのみんなに恩返しがしたいと思う。そのためには俺だけじゃ無理だ。お前たちがいてこその堂上班だからな。

だから小牧!―――」

 

いきなり呼ばれて、飛び上がるように顔を上げた。

 

「誰が何と言おうと、俺のバディはお前だ。それだけは譲れない。以上!」

 

 

 

 

 

 

「手塚、笠原さん。『堂上大好きっ子』の前でゴメンだけど」

 

 

そう言って、俺は堂上に抱き着いた。

 

少し慌てた堂上の耳元で「ありがとう」と囁くと「どういたしまして、だ!」と頭を撫でられた。

 

 

ふふっ、笠原さんの気持ちがちょっとわかる気がするよ。

 

 

 

「きゃ~~~~~っ!!教官同士の抱擁は、美し過ぎますぅぅ!

 

ヨダレものですぅぅぅ!だ~け~ど~~ぉ!

 

羨ましいですぅぅぅ!! ズルいですぅぅぅぅ!

 

 小牧きょーかーん! ソコ、代われです~~~~ぅぅぅ!!」

 

 

 

 

 

あははははははははははははははは

 

 

 

 

笠原さんの一言に、俺は撃沈だった。

腹を抱えて笑った。

もう、息も絶え絶えだ。

 

 

 

 

なんだよ、もう!

 

そんな素直に嫉妬されて。

 

今日一日、君に嫉妬してた俺が馬鹿みたいじゃないか!

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

基地への道に3つの影が並ぶ。

その一つは、笠原さんをおぶった堂上の影だ。

 

「あれだけ今日は寝落ち無いと言ってたのに・・・」

「手塚、そう言うな。嬉しくなっちまったってとこだろ」

 

不満げな手塚を窘めて、堂上は肩に乗った彼女の顔を優しく見つめた。

 

 

「夕方、日報を上げる時に言ってたんだ。

 

 『今日、小牧教官 笑ってませんね』って」

 

「え?」

「ああ、俺も聞きました。コイツ基準で、小牧二正は腹を抱えて上戸にならないと笑ったとカウントされません」

「は?なにそれ」

「だから、お前が今日、一度も上戸にならなかったから気にしてたんだよ、郁は」

 

思ってもみなかった話に、俺は呆けて笠原さんの寝顔を見るしかなかった。

 

「店でお前が腹抱えてた時、郁は泣いてたぞ」

「はい。小さい声で『笑った』って何度も言ってました」

 

「郁はお前が抱えてた気持ちに気づいてたのかもしれないな」

 

 

 

俺が笠原さんに嫉妬してたこと。

子供みたいに、堂上のバディは俺だと心で叫んでいたこと。

 

全部、この子は見透かしてた―――?

 

 

 

 

 

あはははははははははは

 

 

 

そっか。ちょっと悔しいけど。

 

すごく嬉しいな。

 

 

 

 

こんな出来た部下が

 

俺の唯一無二のバディの彼女だって

 

胸を張って言いたいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――小牧きょーかん! ソコ、代われ!!

 

 

 

 

 

 

――嫌だよー!誰が譲るもんかっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin.

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