この作品は、某所で限定公開となってます。

今回は、可愛い女の子たちに翻弄されるのです。。。






いくちゃん、あのね・・・

 

 

 

 

「確保―――――っっ!!」

 

郁の澄んだ声が館内に響き渡って、利用者と業務部員の間から安堵の溜め息が聴こえてきた。

 

スリの現行犯として郁が腕を捻り上げた男は、尚も暴れて逃げようとする。

そこへ素早く走り込んできたのは、言わずもがな堂上班の男衆。

 

手塚は郁の体重が軽いことを考慮し、思い切り自身の体重をかけて、重心移動が済むとすぐに郁から捻り上げた腕を掴み取る。

小牧は手塚が掴んだ腕に手錠をかけ「お話、聞かせていただきます」とブリザード付きの笑顔を見せ、手錠ごとグイッと犯人の身体を持ち上げて立たせた。

堂上は犯人を取り上げられた郁の元へ行き「怪我はないか」と声を掛けると、そっと手を差し延べて郁を立たせてやる。

 

足元がふらついた郁が、堂上の胸にもたれかかる形となった。

 

「あっ!す、スミマセン!」

「ん。だいじょうぶか」

「は、はいっ!ダイジョウブデス・・・」

 

頬を赤く染めながら、何故かカタコトの郁の頭に手を乗せると「よくやった」と褒める堂上。

すっかりお馴染みの光景に、周囲から感嘆と溜め息が漏れる。

 

 

毎度のことだが犯人確保した堂上班は調書を取らねばならない。

小牧と手塚が犯人を連れて先に行ってしまったため、堂上と郁は二人で一緒に会議室へ行くことになるだろう。

防衛部員と館内警備の申し送りをし、業務部員に注意喚起などをして、さあ行こう!と言う時・・・

 

 

「いくちゃーん!きょうもすごいね!」

「いくちゃん、かっこいい~!」

 

幼稚園帰りの仲良し2人組は、郁の大ファンだ。興奮冷めやらぬ様子で、郁の足元に絡みついてきた。

 

「うわっ!まなみちゃん、かのんちゃん!!」

「ね、だから言ったでしょ~?」

 

郁は「なにが?」と聞きながら視線を合わせようとしゃがんだ。

これではすぐに解放されないだろう。堂上は少し離れた所で警備しながら郁を待っていた。

 

「いくちゃんはお姫さまだから、いつもみんなが助けにきてくれるんだよね!」

「うんうん。きょうも3人きてくれたもんね♪」

 

郁は力なく笑いながら「同じ班だからねぇ。一緒に居ないとダメなんだよー」と返したが。

 

 

「ママがね、いくちゃんは3人の王子さまに守られてるけど、いちばんは誰なのかな?って言ってたよ。ね、いくちゃん、だれが一番の王子さま?」

 

 

 

キラッキラの瞳で問いかけられ、郁はたじろいだ。

――いやいやいや・・・そんなこと此処で答えられないよ!

 

チラリと堂上の方を見遣れば。

視線は他に向いて警備をしていそうに見えるが、横を向いた時の耳が・・・僅かに赤い。

 

――聴こえてますね?教官!

 

そうと分かれば無言を通すのみ!

郁はあやふやに笑って誤魔化す作戦に出た。

なかなか答えてくれないじれったさに、子供たちが痺れを切らして耳打ちし始めた。

 

くすくすっと女の子特有の含み笑いを見せ、二人は勝ち誇ったような表情で郁を見る。

 

 

 

 

「いくちゃん、まなみたちがおしえてあげる!」

「うん。いくちゃんに いちばんふさわしい王子さまが誰か」

 

うふふっと二人で顔を見合わせて笑うなんて・・・どこで覚えてきた!

 

 

 

「いくちゃん、あのね・・・

 

 

 

 やっぱり、いくちゃんのこと心配してくれる王子さまがいちばんいいと思うよ!」

 

 

 

 

「そうそう!  ほら!!」

 

 

まなみとかのんが堂上を指差した。

 

 

「心配なんだよね~?」

「いっつもいくちゃんのこと見てるもんね!」

「男の人がくると、すっごい怖い顔してるよね」

「うん、こわ~~~いの!」

「でも、いくちゃんにはデレデレだもんね♡」

 

 

「んなわけあるかぁっ!!」

 

「きゃー♡ 王子さまが怒った~~~!

 きゃはははははは!」

 

 

 

姦しい少女たちのピンポイント攻撃に、堂上、被弾!

 

郁ともども、真っ赤になりながら調書を取ることになるのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 

fin.

 

 

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第9号 花咲く前

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