先日、次男が誕生日を迎えました。
15歳です。信じられません。
受験生です。信じたくありません。

私はお肉が大好きです。
特に「牛肉」。
分厚いやつをレアでいただく・・・至福の時♡

結構な頻度でステーキとかローストビーフとか食べてる自覚はありますが、他人様がお肉食べてるの見ちゃうと、堪らなく食べたくなってしまいます。
子供かっ!って教官に叱られそうです。。。


嗚呼・・・肉食べたい・・・。








タスクより愛をこめて

 

 

 

餅を焼かずに肉を焼け!

 

 

 

 

堂上班の公休日が明け、心身ともにリフレッシュした郁が特殊部隊事務室のドアを開けると、既に登庁していた先輩隊員たちの塊が目に飛び込んできた。

「おおーーっ!これは美味そうだなぁ!」

そんなセリフと共に、前傾姿勢だった一団が背筋を伸ばした。皆、一様に浮かれた顔をしており、今日も通常仕様な空気に安堵した。

「おっはよーございまぁす!みなさん、何を盛り上がってるんですかぁ?」

「お、おはようさん。な、笠原~!ちょっとこれを見てみろ」

と言われて差し出されたのは、田中のスマホ画面。これを覗き込んでいたから、皆が前傾姿勢だったのだと納得した。

「―――ん?・・・わぁ・・・美味しそ~~~~ぉ!」

郁は前傾姿勢のまま画面を食い入るように見つめた。そこに写るのは、白くまあるい皿の中心に整列する赤と茶色の集団。それらはボルドー色の湖に浮かんでいるようだった。

「これ・・・ローストビーフ、ですねぇ・・・嗚呼・・この赤身。堪りません!!」

「やっぱり、笠原も赤身派か」

「お肉なら何でも好きですけど。強いて言えば、牛肉!しかもレアが断トツです!!」

鼻息荒く告げると、予想通りと言わんばかりの笑いが起きた。

「一昨日、高校の同級生の結婚式だったんだ。新宿の結構有名なホテルで披露宴やるって言うからさ、どんな料理が出て来るんだろうって楽しみにしてたんだよ」

「ほへ~~~~。流石、新宿高級ホテル!」

郁にとっては、都内のホテルはどこも高級になってしまうのだが。

「味も見た目も最高だったなぁ。俺もあのホテルで披露宴やりてぇぇぇ!」

「まず、相手を見つけろ」

「・・・・まあ、そうですけどね」

定番のオチがついて、そろそろ始業の準備にかかろうかと思ったが。郁だけがスマホ画面から離れられずにいた。

「おい、笠原?そろそろ時間だぞ?」

「はいぃ・・・わかってマス・・・」と言いつつガン見だ。

「―――笠原よ。お前、食欲に負けてるな?」

「だってぇぇぇ!こんないいお肉・・・久しぶり・・・いや、初めて見たかも!」

「うん、まあ分かるが。焼肉とかなら結構食べてんだろーが」

「いえ・・・ここの所、そんな食欲なかったし・・・」

郁の一言に、皆が微妙な顔つきをした。そうだ―――つい三ヵ月ほど前、郁は査問にかけられていたのだった。以前と変わらない明るい性格の郁に戻っていたから、すっかりそんな事件のことなど忘れてしまっていたが。

 

「うーーーん・・・肉・・・」

郁が小さく唸り始める。背中を丸めた姿は、想像を超えたエネルギーを溜め込んでいるように見えて、少し慄いてしまった。

「か、笠原? お前、大丈夫か?」

遠慮気味に問うてみたが、ガバッと上体を起こされて、驚いて距離を取った隊員もいた。

「―――ど、どうした?」

「お肉・・・食べたい・・」半泣き状態だ。

郁の様子に慌てた先輩たちは、お互いに顔を見合わせて状況回復を思案する。そして、ある隊員から提案が成された。

「そう言えば、駅前通りにお洒落なカフェが出来たとか。そこのステーキ丼が美味いって評判らしくてさ。連日行列らしいけど・・・柴崎と休み合わせて、行ってみたらどうだ?まだ今月は金欠週間になってないだろ?」

「わあ!ステーキ丼!それは食べてみたいですぅ!・・・そうですね、柴崎に聞いてみます!ありがとうございます!!」

 

肉への禁欲に負け、若干テンションを下げてた郁が浮上したのを見て、隊員たちはホッと胸を撫で下ろした。

ニコニコと笑顔を振りまきながら肉の話題で盛り上がる郁の姿を、堂上は自席で溜め息を吐きながら眺めていたのだが、それを知るのは―――敏い一部の隊員のみであった。

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

「笠原、忘れたの?今月は服を買いに行くって約束したわよね?」

「・・・・・あぁん??」

記憶の回路がショートしている郁の頭を遠慮なくペシリと叩いて、柴崎は頬を膨らませながら郁の正面に座った。

「これから忘年会とか新年会とか、あちこちからお声がかかる時期だから、いちいち服装で困らないように服を買い足ししておこうって話したじゃない!」

「あー、そっか・・・で?」

「で?・・じゃないわよ!!服を買うとなったらお金がかかるのよ?肉なんか食べてる場合じゃないでしょうが!」

「・・・え、ダメ?」

「だーめ!」

「うっそ~~~~~っ!(泣)」

「泣いてもダメ!あんたのワードローブ、何とかしないと私が大変なんだから!」

いつも服装で困った時、頼れるのは柴崎だけなのでぐうの音も出ない。

「ぐすん・・・お肉ぅ・・・」

「肉なんてね、飲み会の席でも出て来るわよ。ま、そんな高級肉ではないでしょうけど。でもアンタの場合、肉なら何でもいいんでしょ?ステーキ丼は諦めなさい!」

そもそも肉に興味もない柴崎は、冷たく言い放って話を閉じた。郁はがっくりと項垂れながら、自分の置かれた状況を振り返って「仕方ない」と気持ちを浮上させようとしていたが、高まった肉欲をどうすることも出来ずに悶々と一夜を過ごした。

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

それから数日間。郁のテンションはダダ下がり。タスクの雰囲気も悪くなっている。

原因は「肉」だ。郁が柴崎とのランチを却下され、懐に残るなけなしの金が洋服代となる話を聞いて、皆は仕方ないと片付けた。が、そういう時に限って、郁に聞かせたくない話題ばかりが飛び込んでくるもので・・・。

 

大食いな同期とステーキ屋へ行った、だの。

家族の誕生日祝いに、焼肉をリクエストされた、だの。

父親の還暦祝いで、親戚一同が集まってすき焼きをした、だの。

正月休みを確認してきた理由を聞いたら、しゃぶしゃぶにするから楽しみにしてなさいと言われた、だの。

 

タスクの隊員たちは、肉に関して恵まれた環境にいる―――と、郁が拗ねる状況が生まれている。それを郁に聞かせたくないと思えば思うほどタイミングは壊滅で、全部郁の耳に届いてしまっていた。

 

 

「・・・肉・・・誰か・・・あたしに肉を!!!」

 

それはもう、神に祈りを捧げる乙女だ。

(いや、肉と言ってる段階で乙女という表現は不適切な気もするが)

天井に向けられた懇願を、先輩たちは苦笑しながら見つめる。

「なあ、笠原。この際、洋服買うの諦めたらどうだ?別に、服なんかなんでもいいだろ」

「ああ、お前は何着ても似合うからな。普段着で充分だ、普段着で」

「・・・そ、ですか?そう思いますか?」

涙目になりながらの郁に問われ、隊員たちは全力で肯定の頷きをする。

「えへへ・・・柴崎には悪いけど、洋服は来月ってことにしようかな・・いひひ・・」

どうにもならない郁の肉欲を救うためだけの誘導に、まんまと引っかかったようだ。魔女の恨みを買うことなど、誰も思いつかなかったらしい。

 

「―――それ、どうかと思うぞ」

 

大団円を迎えたかのような安心しきった空気をぶった切ったのは、今日も聞き耳を立てていた堂上だ。

「服を買うと言い出したのは柴崎ですよね。それを無かったことにして、食い意地に任せて肉に走ったら・・・誘惑した皆さんも含めて、柴崎に呪われるでしょうね」

珍しく正論の堂上に、小牧が感嘆の声をあげた。隊員たちは我に返ったようにハッとして、その恐ろしい予言が予言では済まない様を想像する。

「うん・・・うんうん。それは拙い。ひっじょーに、マズいぞ!」

「笠原の所為で、俺たちの未来が無くなる」

「どんだけですかっ!!」

郁は慌てたように反撃するが、味方となって肉道へ誘ってくれる隊員はもう存在しない。

「笠原、諦めろ」

「えーーーっ!やーぁだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うるさいっ、子供かっ!くだらない事で時間潰してないで、さっさと仕事しろっ!」

 

堂上の久々の怒号で、事務室内に静寂が訪れた。郁はがっくりと肩を落とし、とぼとぼと手塚の後をついて館内警備へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

その後のタスクは、郁を浮上させるためだけに存在する「甘やかし集団」と化す。

美味しいお肉を提供する店を虱潰しに探し、手ごろな値段で食べられるレストランの割引券をゲットしに走り、毎日のように郁のご機嫌を伺う。

そんな優しき兄たちの言動に、郁は感謝している様子。嬉しそうに情報を頂いて、これでもかとお礼をしていた。

 

―――堂上は面白くなかった。

柴崎との約束を反故にすることを止めた時点で、郁の肉欲にとって堂上は反対勢力と認定されたと感じていて、タスク内の甘やかしムードからも除外されているように思えてならない。

いい大人なのだから、仲間外れなんて幼稚な考えは無いと思うが、だからと言って今更知らん顔で甘やかし集団に入団する勇気もない。

勇気は無いが――――堂上自身、郁を喜ばせたくてウズウズしていたのは明らかだった。

 

 

 

「きょーかん、日報お願いします」

いつものように、いつもの(遅い)時間に、郁が堂上の脇に立った。日報を確認している間、郁はじっと子犬のように待つだけなのだが・・・

 

「笠原、牛のタタキとかある居酒屋行くんだが・・・高い肉は食わせてやれないが、一緒に行くか?」

離れた所からお誘いがあった。郁は堂上の手元に向けていた視線を宇田川班の方へと変えた。

「・・・タタキ・・・」

ヨダレが出るんじゃないかと思わせるような、うっとりとした声で瞳をキラキラさせている。肉に溺れた郁の恍惚の表情を斜めに見上げて、堂上は我慢の緒が切れた。

「笠原!お前、責任取って付き合えよ」

「は? な、何に、デスカ??」

「肉だ、肉!」

「え・・・」

事務所内の空気が僅かに揺れた。

「俺も洗脳されてだな、肉が食いたくなったんだよ。お前が毎日のように『肉、肉』って騒ぐからだ、アホウがっ!」

「・・・きょーかん、も?」

「ああ」

「お肉、食べたいですか」

「ああ。だから、付き合え!」

 

捨て台詞にしては甘く聴こえたのは、多分タスクの人間だけだ。本人に聞こえないようにこっそりと笑い合って、郁には「良かったなー、行ってこい」と快く送り出しをする。

事務室を出る二人の後ろ姿を見送りながら、ここ数日間の涙ぐましい努力の結果に満足の笑顔も浮かぶ。

「笠原の嬉しそうなこと」

「そりゃ、念願の肉だもんなぁ」

「同じくらいに堂上の足取りも軽いですけど」

小牧が吹き出しながら進藤たちの会話に割って入った。

「なあ、あれはヤキモチか?」

「そうだろうな。笠原が嬉しそうに甘やかされるから」

「ぐふふ・・・それと、もう一つ、あるでしょうね」

小牧が意味深に笑う。

 

「あいつ、笠原さんの新しい服も楽しみなんですよ。だから買い物断るの、却下したんだと思いますよ、俺は」

「・・・なんだよ。あいつが一番、笠原を甘やかしてるじゃねぇか!」

「っぷぷ。餅焼く前に、肉焼けなかったかなぁ、堂上は」

小牧のツッコミに、一同は声をあげて笑った。

 

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

「きょーかん?ホントに、なんでお肉食べさせてくれるんですかぁ?」

「だから、お前が毎日騒いでたからだと言っただろ」

「それは・・・ごめんなさい、なんですけどぉ。明日、買い物行くとき、コスト抑えてちょっとリッチなランチ食べてこようと思ってたから・・・お肉は我慢できますよ?」

郁は心底申し訳なさそうにしながら、堂上の後をちょこちょことついて行く。本当は堂上の表情が見たくて、出来れば横に並んで歩きたかったのだが、追い付きそうになると僅かに大股で進んで行かれてしまう。何度目かの大股の後、堂上は不意に足を止めて振り返った。

 

「―――いいから。明日の服選びは、柴崎の指示に素直に従ってこい」

「んー? なーんか変なのぉ。命令みたい」

郁の口から「命令」と言われて、堂上は少し反省した。本心を隠しているから、どうしてもそんな口調でしか話せなくなっているのだと自覚がある。

反省と謝罪をこめて、ここは苦手な素直さだけで勝負だ。

 

 

 

「きっと柴崎は―――笠原が一番に見える服を選んでくれるだろうよ」

「・・・はい。それはもう、確実に」

力強く頷いた郁は、堂上の視線を感じて顔をあげた。

 

「それは、楽しみだな」

 

言ってくるりと向きを変えた堂上の背中に向けて「はいっ!」と元気に返事をしてから、郁は後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin



関連記事
スポンサーサイト

僕らの時代

記憶の背中

comment iconコメント ( 5 )

突然、お肉が無性に食べたくなる日がある。
郁たん、良かったね。
ほんと、餅を焼かずに肉を焼けだ!上手い!!!
どんなお洋服買うのかなー。
きっと、次はそのかわいい郁たんの姿に
骨抜きになっている教官の姿が拝めるのかしら?
忘年会で一波乱も二波乱もあるのかしら??
その話はいつUPされるのかしら???ぐふふふ。
楽しみだわねー。ぐふふふ。

名前: kiko [Edit] 2017-11-06 18:41

肉欲、バンザイ!

「・・・肉・・・誰か・・・あたしに肉を!!!」
これ、私のステーキ写真見て、リアルなあなたのセリフ(笑)
これほど笑ったことはなかったよ。うん♪
肉欲に溺れおってからに(笑)

堂上さん、タスク諸兄らを差し置いて、郁ちゃんを甘やかしてくれてありがとう❤
「笠原、よかったなぁ~」って、見送ってくれるタスクの面々のニヤケ顔と絶対私、今同じ顔してるわw ww
郁ちゃんよかったね~
郁ちゃん300gいけるね。教官はどうするんだろ?
男のプライドにかけて400いく?それとも、郁ちゃんはサーロインで、教官は上質なフィレ300gかしら?
美味しく食べて、お金出す出さないでもめちゃダメよ!
郁ちゃんは、笑顔で「ご馳走様でしたっ」って言ってあげて♪そしたら、すぐ次の機会があるよ!
「新しい服見せろ」って口実でね(笑)

いやん。これ読んだら、今度は私の肉欲がっ!
誰か私に、肉を……

名前: aya@屋根裏部屋 [Edit] 2017-11-06 19:12

きょーかん(*≧︎艸≦︎)

悠さん…じゃなかったww
郁ちゃんお肉食べられて良かったね〜(*´꒳`*)
郁ちゃんを元気付けるはずが素直にお肉に誘えない教官のお尻に火をつけたタスクの面々はさすが!
教官は郁ちゃんを甘やかせるし新しい服も見られる、郁ちゃんはお肉にありつけて…しかも教官と♡
結果、教官も郁ちゃんも喜ぶ=タスクも平和(笑)
ウフフ(*≧︎艸≦︎)私もしあわせ〜(*´꒳`*)
あ〜ステーキ食べたいっ!

名前: yuca [Edit] 2017-11-06 20:22

お肉~🐮

今晩は🌛この年になるとお肉300gはキツイです(笑)先日も〇っくりド〇ンキーでバーグディッシュ150gで満足したくらいですので。お肉に浮かれる郁ちゃんも可愛いけど、タスクの諸兄に焼き餅を妬いちゃう教官も可愛いですね。

名前: torotan [Edit] 2017-11-06 22:12

肉祭り

次男さんお誕生日おめでとうございます!!

それにしてもタスクの郁ちゃんへの可愛がりかた半端ないですねー♡♡読んでてなんどツッこんだことか(笑)
でもタスクが可愛がれば可愛がるほど、教官は面白くないでしょうね‼俺が一番可愛がるんだー!!!と顔に出てそう(笑)

名前: ssssfamily [Edit] 2017-11-07 13:53

コメントの投稿