新作をお届けします。
夏前からほったらかしになっていた未完のシリーズ「桜と手紙」です。
エンディングを見切り発車で書き始めたら、意外にもお話自体が「完」となりました(笑)
もうこれ以上引っ張っても、大した話は書けそうにないと思いました。
でも、もしも何か浮かんだら、もう一本書いて終わりにしたい・・・かもw
とりあえず最終回にしておきますね~(*'▽')

ちょっと長いお話になりました。
郁ちゃんがすごく頑張ったぞww
堂上さんもある意味頑張ったぞ・・・♡

このシリーズタイトルは ♪鶴の「桜」と「手紙」から。







手紙 3

 

 

 

関西図書基地防衛部女子更衣室の扉に鍵がかけられた。

シリンダーの乾いた音が廊下に響いたのはほんの一瞬で、直後に階下からドタドタと足音が近づいてきた。その足音の集団は郁のいる棟とは逆方向へ向かって行く。

同じ訓練を熟してきて、この距離感は何とも寂しく感じてしまうが致し方ない。郁は防衛部員であり、彼らは特殊部隊員なのだから。

 

郁は自身のロッカーを開け、一番に目に飛び込んできた白い封筒に手をのばした。

手に取ると少し重みを感じるそれは、関東の特殊部隊員から郁へ宛てられた手紙の束だ。夏の日差しが強く差し込んでいたあの日、堂上の胸ポケットで更に温められていた想いの束は、その後郁の手によって何度も開かれてきた。封筒の角は形を留めることが出来ずに色もついてきたようだ。

 

――関東だったら更衣室はすぐ近くだったのになぁ

 

 

 

 

 

9月になっても夏日は続き、残暑の厳しさに毎日不満を垂れていた郁に、関西特殊部隊の隊長・澤田より呼び出しがかかったのは先々週のことだった。

11月に開催される図書館協会全国大会は関西図書隊が幹事となっているため、俄かに慌ただしくなっている。準備の第一段階として、会期中の警備計画を全国の特殊部隊隊長クラスと話し合う検討会が8月に開かれた。その会議に関東タスクの玄田は欠席。代わりに堂上を送り込んできて、関西で郁が立派に防衛部員として仕事を熟していることを見せることが出来た。

郁が関東で身に付けていたのは戦闘職種としての能力だけではない。防衛の分野でどこに出しても恥ずかしくない知識を披露できるだけのスキルもあり、郁の視点があったからこそ行き届いた資料を提示することが出来たのだ。その点だけでも、防衛方ナンバー2と呼ばれる田所は郁を高く評価していたのだが、彼女は特殊部隊員としての体力(耐力)も兼ね備えている。そのことを黙って見過ごす澤田ではなかった。

 

「笠原一士。図書館協会の全国大会警備だが、君には特殊部隊員として任務に就いてもらいたい」

「・・・は?」

「大丈夫か?ちゃんと命令を理解したか?」

「えっとぉ・・・あたし、防衛部員、ですよね?」

「ああ。それを、大会終了まで特殊部隊員として働いて欲しいと言ってるんだが」

きょとんとしていた郁が、澤田を仰け反らせるくらいの雄叫びをあげた。

「えっ、うっそ、あたし、タスクですかぁ?」

「そうだ。君のその能力を使わないのは勿体ない。大きな仕事だ、存分に働いてくれ」

「は、はい!頑張りますっ!!」

素直に喜んでいる郁の様子にそっと笑みをこぼしながらも、澤田はキリッと視線を強くして「訓練にも合流してもらう」と言った。

久しぶりの本格的な特殊部隊仕様の訓練が出来るとなって、郁はテンションがあがるのを抑えきれなかった。

 

だから、かもしれない。

意識が春以前に戻ってしまった、という感じか。普段の心構えも、神経の配り方も、身体の反応の速さも、一気に特殊部隊仕様に変化していく。郁にとっては特別な意識をしたわけではなかったのだが、きっとそれは関東で培われたものなのだろう。明らかに雰囲気の変わった郁に、防衛部で共に働いてきたメンバーが戸惑った。

男性隊員たちはその変化を時間をかけて受け入れた。が、どうしても受け入れられなかったのは女性防衛員と、一部の業務部員だった。

 

図書館協会全国大会まで郁は特殊部隊の訓練に合流。空いた時間には防衛部の任務に就くという特別シフトに、あからさまな嫌悪の空気が漂い始めたのは今週に入ってから。

郁はタスクの訓練後、防衛部女子更衣室で一人きりになると、深い溜め息を吐いた。

「午後の業務、みんなに合流するの気が重いなぁ」

特殊部隊員として体を動かせることは喜びでしかなかったが、それは防衛部に配属されている身としては表に出してはいけないものだったと、今更ながら気づいた。

「教官にも気を引き締めろって注意されたのにね」自嘲気味に呟いた。

 

 

 

澤田からの命令を受けてすぐ、郁は堂上へ連絡した。業務中だったため遠慮してメールにしたのだが、意外にも堂上の方から声を届けてくれた。

『良かったな。お前はいつでもトップスピードで走っていたいんだろうからな』

遠慮することなく全力で走れるな、と弾んだ声を聴かせたその人は、郁に純粋な嬉しさと未体験の恥ずかしさを教えてくれた。――再会の日のあの告白は、何度思い出しても赤面ものだった。

 

「で、でも、きょーかん?あたし、春からこっち、タスクの訓練って月に一度の合同訓練くらいしかやってなくて。走り込みは自主トレしてますけど、体力的について行けるか不安です」

「それも見越しての事前訓練だろ。他の隊員とも上手く連携を取らなけりゃならないし。本番当日までに体が戻ればいい」

関東に居た頃は、何事にも厳しく指導されていたことしか思い出せないが、それに隠された上官としての想いを知れば、いつでも郁をタスクの一員として最前線で活躍させるためのものだったと理解できる。物理的な距離が出来てからはちゃんと言葉で伝えてくれることにも、郁にとっては赤面ものなのだが。

「ただな―――笠原、あまり張り切り過ぎないようにな。気持ちを引き締めてタスクに合流するように」

「・・・あたし、そんなに浮かれてますか」

「ああ、ふわふわして飛んで行きそうなんじゃないか?想像がつくぞ」

確かに嬉しくって嬉しくって仕方がないとしか言いようがない気持ちだったが。

「きょーかん、なんだかちょっとだけ不機嫌?」思ったことを訊いてみた。

「ん・・・別に」

「あれ?当たりですか」少しニヤけてしまう。

あたしにだって離れてても分かることあるんですよーっと自慢気に言うと、堂上から思いがけず気持ちを吐露された。

 

「お前が特殊部隊員として動く時は、俺の指揮下で・・・と思っただけだ」

 

完全な独占欲の塊だな、と笑った声に、郁の胸は高鳴った。と同時に気づいた。

果たして、堂上以外の指示に上手く反応できるのだろうか―――不安が過る。

そんな不安を吹き飛ばすかのように、郁は特殊部隊の訓練と自主練に集中した。僅か半月足らずで身体の感覚が戻るほどだったのだが、その鬼気迫る集中力を目の当たりにした防衛部の同僚たちが徐々に引いていく。

自分たちとは根本的に違う、ということに気付いてしまった防衛部員の特に女子隊員は、同じ任務中でも郁と距離を置くようになった。

そんな環境で大会終了まで仕事を続けなければならないのだ。気も重くなるだろう。

 

 

 

訓練後の更衣室は、特に郁を独りにさせた。

特殊部隊の更衣室と防衛部の更衣室は実質的な距離がある。

今の郁と防衛部員たちとは心の距離がある。

関西と関東では―――――

 

途方に暮れる距離を感じて、再び手の中の封筒に視線を落とした。

「離れてるけど・・・心はいつも近くにあります、よね?」

 

いつも大声で笑い合っていた頃の、優しい諸兄たちの顔が浮かんでじわりと涙が溢れてきた。

 

 

 

 

◆◆

 

 

図書館協会全国大会が三日後にせまっている。

いよいよ、という空気は先週辺りから関西図書基地全体を包んでいた。それぞれの部署がそれぞれに忙しく準備する中、特殊部隊は9月から続けてきた対要人警護訓練の総仕上げをするとともに、防衛部と警備計画の最終チェックやら配置の検討会やらで大忙しだ。

特殊部隊で訓練をするようになった郁への防衛部員たちの対応は、相変わらず距離のあるものだった。郁を高く評価する田所や澤田の存在は有り難かったが、それが反って依怙贔屓だの媚びをうっただの、八束水のネタにもなったりした。

 

そんな辛い時間もゴールが見えてきた。大会が終われば、郁は元通り防衛部員として働けばいいのだ。こんな特別なことはそうそう無い・・・はず。

「明日は会場の検索です。大きなホテルだから、きっと夜中までかかりますね」

『下手したら二日がかりじゃないのか。当日まで泊りがけってこともあるぞ』

「・・・そっか。じゃ、お泊りセットも準備しておこうかな」

『ん。往復が面倒なら、それがいいだろ』

「はいっ!」

いつだって堂上のアドバイスは的確だ。それをよく知っているからこそ素直に聞き入れられる。

『関西タスクのメンバーとは、どうだ?ちゃんとコミュニケーションは取れたのか』

「はい。みなさん、とてもよくしてくださいます。万が一の時の対処についてとか、あたしの意見を聴いてくれるんです」

『それは、稲嶺司令誘拐事件の時のお前の判断が良かったからだろ』

「・・・みんな知ってるんですか」

『当たり前だ。お前が関東でどれだけの功労者だったか、隊長が自慢げに語るの想像つくだろ』

「あははは!あたしのこと、自慢しますかぁ?」

『ああ、自慢の部下だからな』

サラリと告げられた言葉が、郁には堪らなく嬉しい一言で。思わずスマホを持つ手に力が入る。

 

『なあ、笠原。この任務が終わったら、まとまった休みが貰えるって言ってたな』

「はい。とりあえず、大会翌日から二日間は公休扱いです」

『・・・そうか』

「帰ろうかな」

小さく零した一言に、堂上が「何処へ?」と聞く。

「・・・茨城?」

『・・・そっちな』

「ウソです!そうじゃなくて!・・・きょーかんのとこ?」

『なんで疑問形なんだよ!』

堂上の素直な返しに郁は吹き出して、二人で笑い合った。

『要人警護だからって緊張はし過ぎるなよ。視野が狭くなるからな』

完璧な任務遂行が出来るように、郁の僅かな緊張を解してくれたのだと分かると胸がほんわかと温かくなる。

 

――やっぱり、早く帰りたいな。教官のところに

 

 

 

◆◆◆

 

 

堂上の予想通り全国大会前の二日間をかけた検索は、関西図書隊の足元を掬うものとなった。

下っ端でしかない郁は、終始苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。事前準備はかなり早い段階で始まったいたはずなのに、この土壇場になって慌てて上書きすることの多い警備計画。机上の空論とはこのことだと改めて教えられる。

図書館協会の全国大会は4年に一度行われていて、毎回幹事となる基地のお膝元で開催されるため前回の幹事経験を語れる隊員が殆ど居ない。どの基地も、一から計画しているようなものだった。よって過去の事例に倣うことが出来ないのが悩みの種だ。

 

「進行や手配などは、どの基地が幹事でも変わらないですが、開催場所が違うということは警備方法が変わるということ。ここまでくると、一か八かの賭けですね」

「どんなに準備をしても、どこかに必ず穴は出来る。それを現場の人間がどれだけカバーできるか・・・ということになる。正直、ホテルの検索作業だって、予定通りに終わると思っていたんだが。甘かったな」

「一応、前回大会のスケジュールに沿って、予備日を設定しておいてよかったですね」

澤田が手元の資料の一点を指で突きながら、田所の反応を伺った。

「それも、8月の会議の時に関東の隊員から指摘されて設定し直したものだ」

「例の、玄田さんの懐刀ですね?」澤田はニヤリと口角をあげた。

 

「実は、昨日から笠原が泊まり込んでるって話なんです。タスクは前日から泊まり込むことになってます。みんな、気が早いなって揶揄ったんですが、どうも誰かにアドバイスされて検索は一日じゃ終わらないかもしれないと踏んだらしいですね」

「・・・関東、か?」

「はい、多分。本人は寮へ往復するのが面倒だから準備したとか言ってましたが、あれは万が一を考えておけと言われたんでしょうね。前上司に」澤田はくくくっと、思い出したように笑った。

「堂上二正か・・・会議の時、的確な指摘をしてきた。驚くことに、その指摘は前日準備の時に笠原さんも言っていたことでな。それを基に追加資料を作ったんだ。お陰で会議は滞りなく進められた」

「うちの防衛部長は関東の玄田さんの一年後輩?だとかで。あの人に頼まれたら断れないって、笠原の異動を受け入れたそうです」

「笠原さんはまだ二年目だろ?それであれだけ鋭い視点を持っているんだ。関東の教育が間違ってなかったと言わせるだけのものを見せてもらったな」

郁の働きと、夏に会った堂上の存在だけで、田所たちは関東の有能さを理解する。

 

「なあ、澤田。そこで相談なんだが―――」

 

 

 

 

 

 

 

大会前日の昼前。

前日までに終了していたホテル内の検索作業で見つかった警備の穴を埋めるべく、朝から人員配置の検討が行われていた。その結果を警備担当隊員を集めて指示する。外部に漏れないよう、ホテルスタッフも締め出しての極秘会議となった。

「――この配置で最終決定としたいんだが。現場を見ていて何か気付いたことはあるか?」

責任者である田所の質問に、皆が真剣に思考を巡らせる。

 

「んー、ホントは控室を分けたいところですよねー」

 

煮詰まったような空気の中からダダ漏れた声は郁のものだった。

「笠原一士、意見があるのかな」

「あ、あれ?あたし、声に出してましたかぁ?」

郁のとぼけた言葉に笑いが起こる。

「控室を分けたいと聴こえたが?その根拠は?」

田所の問いかけに、郁は背筋を伸ばした。

 

「来賓者の控室が、会場となる大広間の近くに確保されています。これはきっと来賓の方々のご足労に配慮してのことだとは思います。ですが、重要警備箇所をワンフロアに集中しすぎていて逆に危険ではありませんか?攻撃をしかけてくる者からしてみたら、集団で一気にフロアを占拠すれば済んでしまいます。別の階に控室を移動した方がいいと思います」

 

郁の進言に澤田は真剣な表情で聞き入る。手元の資料に目を落としながら考え込んだ。

「だが、今から控室を移動すると言っても・・・」

「図書隊員用に確保している階があるじゃないですか!交換すればいいんです!」

場内がざわついた。今頃になってだとか、何様のつもりだとか、囁く声は後方で郁への八束水も含んでいた。

それが耳に届いたからか、郁は少しテンションを下げて困った顔をした。

「ただ・・・別階層にも人員配置するとなると、足らないんですよねぇ・・・。

他所の基地からも防衛員が借り出されることになってるし、別フロアも確保してあったから、始めから控室を土壇場で変更する計画かと思っていたんです。でも、やっぱり人員が足りてないようだから・・・無理ですか、ね?」

手元の資料で顔を半分隠すような仕草で、郁は田所を伺った。その田所は澤田と目を合わせると数回の瞬きをして頷き、薄く笑顔を見せながら隊員たちに言い渡した。

 

「今の提案を採用する。これから隊員専用フロアとして借りている階に控室を移動する。ただし、このことは口外無用だ。そして、来賓控室の警護担当は特殊部隊にあたってもらう。それに伴う配置変更は追って担当者に伝える。以上、解散」

 

田所の迷いのない命令に、納得して逸早く動き始めたのは特殊部隊員&郁で、防衛部からの精鋭は不満気な表情を見せた。

 

 特別扱い

 依怙贔屓

 媚び売った

 

それは郁が特殊部隊と合流し始めてから何度も耳に入った言葉。だが今回は、それらに紛れて聞き捨てならない言葉も聴こえてきた。

 

『田所三監と笠原はデキてる』

 

郁は一瞬足を止めたが、すぐに顔を上げて部屋を出た。今は自分のことなど構っていられない。その想いが一番だった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

ほどなくして新たな警備配置が通達される。

郁は午前の予告通り来賓警護に就くのだが、自分が提案したことで混乱が生じないか心配になっていた。人員が足りなくなるのは明らかだったからだ。

「澤田隊長、本当に大丈夫なんですか?手薄になるところは無いんですか?」

「笠原、心配すんな。そこは田所三監が手配してくれている」

「で、でも、本番は明日ですよ?急に警備の増員を手配したとしても、連携を取るのは難しくなるんじゃないですか?」

郁の言葉に澤田は笑顔を見せた。それはこの場に相応しくないものに思えて、郁は怪訝な顔で見つめ返した。

「ま、普通ならな」

澤田が残したのは、意味深な言葉と余裕のある表情だった。それが何となく関東の誰かに似ている気がして、郁は少しばかり安心を覚えた。

 

――やっぱり、隊長の器ってあるんだなぁ

 

 

 

 

先日、堂上と連絡を取った時に玄田からの伝言があった。

今回の図書館協会全国大会の来賓の中に、超VIPの名前があがっているため想定以上の注意が必要だ、という話だった。本来、関西が幹事になっている案件に、関東の者が口を挟むことではないのだが、玄田が情報収集に走ったのには理由があったのだろう。

「きっと、お前のことが心配で、勝手に動いたんだと思うぞ」

「えー!あたしですかぁ?」

「ああ。情報の全容は明らかにしてくれないんだが、かなり危機感を持ってる感じだ。多分、良化賛同団体の動きが気になってるんだろうな」

「あたしに何か出来ますか?」

「ん、隊長からの伝言だ。『現在の警備計画を極秘で変更しろ』。わかるか?」

「・・・なんとなく?」電話口で小首を傾げた。

「万が一、警備計画が漏れていた場合を考えて、相手の裏をかく戦法だ。理由はどうでもいい、とにかくVIPを襲撃されることを想定して計画を変更するように話を持っていけ」

随分と乱暴な手段のように感じたが、郁は努めて明るい声で「あたしに出来ますかねぇ」と笑った。それは少しの不安が含まれていると、堂上には理解できる。

 

「お前なら、大丈夫だ」

 

たった一言なのに、途轍もなく心強くて。郁は電話の向こうの堂上を見据えるように、強い視線で顔を上げた。

 

その時に心に誓ったことを実行する。

堂上は・・・関東タスクのみんなは、郁のことを信じている。必ずやってくれると期待されていると思えた。だから、これまで培ったスキルを存分に発揮して見せる。

 

 

 

来賓控室の移動を思いついた郁は、どういった理由を掲げるか悩みに悩んだ。警備変更にまで上を動かすには少しばかり弱いとは思ったが、心配を他所に郁の提案は通ってしまった。これは、もしかすると田所たちも考えていたことなのかもしれない・・・と思えてならない。

もしそうであったら、関西の防衛部も満更ではないと思った。正しい状況判断が出来る人材が存在してくれれば、下っ端隊員は安心できるものだ。関西も関東のように名実ともに評価される隊になれると期待感が膨らんだ。

 

郁は単純だ。

少しでも関西図書隊の明るい将来を想像できると、仕事のヤル気につながった。だから、陰でヒソヒソと囁かれていた噂や誹謗中傷にはスルー対応で、目の前の案件にだけ気持ちを集中して前日をやり過ごした。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

特殊部隊員のほとんどは前日からホテルに泊りがけで、当日の早朝から最終チェックに余念がない。ゴミ箱やバックヤードに並ぶ備品の影にまで目を光らせる。ここ一週間、毎日続けられてきた仕事だが、慣れが出ると見落としも考えられる。ダブル、トリプルチェックを強要された。

防衛部員たちは若干辟易しているようだったが、その中で意気揚々と笑顔で軽い動きを見せていたのは郁だ。本番を迎え、特殊部隊仕様の行動が普通で通る。郁にとっては特別なことでなく、普段の業務と変わらない意識で臨んでいた。

 

 

 

関西特殊部隊は来賓控室フロアの警備を担当していた。

午前10時を回って、徐々に来賓者が会場入りを始める。その中に関東から稲嶺の姿もあり、郁は僅かにテンションをあげた。

「い、稲嶺司令。お疲れ様です」ビシッと敬礼を添えた。

「笠原さん、お元気そうですね」

「はい!関西の防衛部で皆さんにご指導いただいて、一人前になれるよう励んでます」

「ふふ、あなたの頑張る姿、目に浮かびますよ」

共に誘拐犯の前で命の覚悟をした二人。特別な感情の結びつきがあるらしい。

「今回は大変ですね。関西の皆さんのご苦労を思うと、最後まで何事も無くと願うばかりですよ」

「ありがとうございます。ご来賓の皆様にご迷惑のかからないよう、万全の態勢で警備しますので、司令もご協力のほどよろしくお願いします」

深々と頭を下げた郁を目を細めて見る稲嶺。少し離れた所で二人の様子を見ていた関西の防衛方は、とても意外だと言わんばかりの表情をしていた。

 

「大丈夫ですよ。万が一、何か起きても、きっと彼らが治めてくれます」

 

「―――ん?」

 

郁の疑問の顔には返事をせず、稲嶺は介添えのSPに合図をして控室に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

そして―――事件は一部の隊員の予想通りに起きた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

>>指令部より通達。メイン会場バックヤードで不審物発見。繰り返す―――

 

 

昼近くになって、緊張の糸を更に張り詰めるだけの報告が耳に入ってきた。これだけ警戒していたにも関わらず不審物の発見となってしまったことは、防衛方の士気を下げた。

そんな中―――

 

「さあ、落ち込んでる暇はありません!すぐに再検索かけて、他に不審物が無いか調べましょう。もしかしたら不審者に出くわすかもしれません!」

 

郁のハリのある声が響いた。それが届いたのか、澤田からも指令が飛ぶ。

>>中身は確認中。フェイクの可能性もある。油断せずに検索にかかれ

一斉チャンネルで伝えられた言葉は、特殊部隊の面々にはやる気に変換される。

郁は仲間たちの様子に満足し、ちょっと考えてから澤田に無線を飛ばした。

 

「隊長、今日の超VIPって誰なんですか?」

>>・・・何か気になることでもあるのか

「はい。もしかしたらそのVIPをピンポイントで狙っているんじゃないかって思って。それなら、更に警備変更をして体制を整えたいです」

>>笠原、どんな作戦か聞かせてみろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では大臣、お時間までこちらでごゆっくりお過ごしください!何かありましたら、遠慮なくお申し付けください」

 

郁の通る声が廊下の端に立っていた澤田の耳にも届いた。

このフロアの個室を来賓一人一人の控室とし、昼食を挟んで午後の式典までゆっくりとしてもらうことになっている。各自が自由にルームサービスを受けられるのでなかなかの好評であったが、警護する側からするとホテルの従業員のチェックまで怠れないので気が抜けない。

バックヤードで発見された不審物は、従業員に扮装した良化賛同団体構成員の仕業だと郁は確信している。中身はすぐにフェイクだと判明したが、すでに敵が潜り込んでいることに恐れを感じる隊員も少なくは無かった。

「かなり自信があるみたいですね。でも、防衛員を動揺させるものにはなったので、成功と言えますね」

「自信があるってことに関しては、こちらも負けてはいないがな」

澤田がニヤリと嗤って郁を見た。

「隊長、あたしの意見を聞いてくださってありがとうございました!」

「いや、正直、お前のって言うより、お前のバックについてる奴らを信じてるんだがなぁ」

「・・・あれ?バレてますかぁ」てへへと舌を出す。

「田所三監も笠原の視点には全幅の信頼をおいている。だから、今回のこの作戦は失敗出来ないぞ」

「わかってます。大丈夫です」

郁は大きく頷きながら力強く前を見据えた。「時間通りに」と耳打ちするように囁くと、二人は客室が並ぶ廊下から姿を消す様に配置についた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

――どうか、考えすぎでありますように!

 

 

郁は心の中で繰り返し願っていた。

図書館協会の全国大会。4年に一度の大きな催しとあって、来賓はVIP中のVIPと言えた。中でも玄田が仲間に打ち明けることも躊躇ったのが、文部科学大臣の来席だ。図書館は教育・文化の面で文科省の傘下で活動することが多いため、協会の催し物となれば声をかけないわけにはいかない。だが、普段の会合などでは大臣が出席することはほぼ無く、代理として大臣補佐やらなんちゃら部長などがやって来るのが通例だ。

しかし今回は大臣自らが出席する、という情報を得た。当然と思えたのには、今回が全国大会だからという理由だけではない。現文科省大臣は、メディア良化委員会を快く思っていない希少な存在で、そのことを公言しているためにちょっとした諍いが絶えない人物だ。図書館協会の会合に出席し、挨拶の場でまた何かしら爆弾発言をするのではないか・・・とマスコミを期待させるのだろうと読んだ。

玄田と同等の予想をしたのは、敵対する良化委員会だ。だから密かに賛同団体に対して、大臣を狙う派手なステージを用意してやったのだろう。

 

図書隊にとっては迷惑な話である。国の組織の中でのゴタゴタに巻き込まれた感は否めないが、図書館協会の名のもとで、良化賛同団体の好き勝手にさせるわけにもいかない。

今回は文部科学大臣を命をかけて守る、と意気込んだ郁は、腕時計の秒針の動きに自分の鼓動を合わせるかのようにしてひたすらその時を待った。

 

 

 

 

廊下の中ほどのドアの前に、ワゴンを押したホテル従業員が立つ。

チャイムを鳴らす。―――が、応答が無い。

もう一度チャイムを鳴らすかと思いきや、その男は躊躇いもせずにマスターキーでドアのカギを開けた。同時に、黙って滑り込むように入室する動作は、どこかで訓練でも受けたのかと思うくらいスムーズだった。

 

ドアの中に男の姿が消えたと同時に、郁と澤田がそれぞれの場所からトップスピードで飛び出して、目的の部屋の前で合流。すぐに郁が部屋のカードキーを通してドアを開けた。

 

 

「動くなっ!!」

入室してすぐに澤田が叫んだ。

室内には窓に向かってソファーに座る人物と、それに銃口を向けている従業員がいた。

「大臣には我々と行動を共にしていただきます。よろしいですね?」

落ち着いた様子の従業員姿の男――賛同団体の構成員であろう――は、『大臣』の斜め後ろから肩に手を置いたまま澤田と郁に牽制の視線を寄越した。

 

「作戦は失敗だと、仲間に報告した方がいいんじゃないか?」

澤田の低い声が緊張を呼ぶ。

「失敗?それはそちらのことでしょう。大臣を人質に取られて、成功だと言えますか?」

厭らしく嗤ったのを郁は睨みつけていた。そして、その視線の中に、男・・・『大臣』・・・ベランダに面する大窓を捉え、一瞬目を疑った。

 

―― え・・・うっそ!

 

 

「笠原!」澤田が郁の様子に声をかけてきて、我に返った郁は「はい!」と小さく返事をしてから男に一歩近づいた。

 

「来るな。それ以上近づいたら、大臣の命は無いと思え」

「んーっ、大臣の命?それは大丈夫だから、別にいいです」

「はぁ?」予想外すぎる返答に声が裏返る。

「あの、あなた『大臣』のお顔、見ました?」

郁の口調は緊張の欠片も無く、男のテンションとあまりにも違い過ぎて調子が狂わされるようだ。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、チラリと横目で何度か『大臣』の方に視線を泳がす。幾度目かで、ソファーに座っているその人物が首を少し動かした。

「・・・っ!!!」

「ね?その人、大臣じゃないでしょう?」

「は、諮ったなっ!!」

男がナイフを持つ手を振り上げると同時に――――

GOーーッッ!!!」

郁の悲鳴にも似た声が室内に響くと、窓ガラスが勢いよく開け放たれ、ドオッと特殊部隊フル装備の一団が雪崩れ込んできた。

 

「確保―――っ!!」

 

 

 

「・・・きょーかんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

来賓ご一同は、時間通りに会場へ誘導され、式典は粛々と開会を宣言された。

来賓の客室を警備していた防衛員が、検索をかけながらメインフロアに集まってくると、会場入り口に立つ一団を目にして立ち止まる。微妙な距離を取りつつの関西の隊員の中から、郁が一歩飛び出した。

 

「おーっ!笠原~~~!!」

「半年ぶりかぁ?元気そうだな!」

「またデカくなったかぁ?」

「うっ! デカい言うなっ!!」

「「「わははははははは!」」」

 

進藤、宇田川、田中が手を挙げながら笑っている。

 

「笠原、元気そうだな」

「た、たいちょ~~~~~~~っ!!」

涙目になる郁が玄田の元へ走り出しそうになると「待て」と進藤が掌を見せた。

「ここで隊長に抱きつくとか、ナシな。お前はコッチ!」

そう言って進藤は堂上の腕を引いて思い切り前へ投げるように押し出した。

 

「わっ!なにするんですか!」

「いいから、いいから~♪」楽しそうに節をつけている。

 

郁が見渡す限り、関東タスクの3班が玄田と共に来ているようだ。皆、抗争時のフル装備。本格的なテロ対策と言っても過言ではない立ち姿だ。

素直に「カッコいい」と思った郁だったが、それはお約束のダダ漏れだったようで、小牧が「ぐはっ!」と吹き出すと堂上は眉間の皺を少しだけ深くして頬を掻いた。

 

「な、なんでみんないるんですか!?」

「田所に応援を頼まれたんだよ。当日、メインフロアの警備は関東特殊部隊に任された!」

「で、でも・・・さっきの・・・大臣襲撃の犯人確保の部隊も・・・」

「ああ、それは―――澤田から笠原が立てたシナリオを聞いて、タイミングを合わせるためには堂上班が動いた方がいいだろうと思ってな」玄田がニヤリと笑った。

「笠原、タイミングはバッチリだったみたいじゃないか!」進藤もニヤニヤしている。

「そりゃそうだよねー!班長からのハンドシグナル見た途端、涙目になってたくらいだもんねー!」小牧も腹を抱えながら容赦ない。

「んなっ!!涙目なんて!!」反抗しながら涙目だ。

 

「半年離れてても、堂上の手はすぐに分かってくれるんだもん。上官冥利に尽きるねぇ」

小牧の復活の一言は、郁だけでなく関東のメンバーの心もくすぐった。

「さあ、さあ!ここは再会の抱擁を許そうじゃないか!」

「ばっ!!公衆の面前で抱擁とか、何言ってんですかぁ!!」

「ん?公衆の面前でなければいいのか?」

「そういうことではなくてぇぇ!」

進藤と堂上のゴールの見えない掛け合いに、郁はクスッと笑ってしまう。その微かに漏れた声も聞き逃すことのない堂上は、郁に視線をやってから深く溜め息をついた。

 

「・・・笠原。なに泣いてんだ」

 

言われて初めて気が付いた。

懐かしい関東の空気を目の前で感じて、郁は堪らなくなってしまった。

堂上と視線が合うと、更に涙は止まらない。

その郁の気持ちが届いたようで、堂上はふっと笑って見せてから腕を広げた。

 

「笠原、来い!」

 

 

 

郁は弾きだされたように一歩踏み出して―――堂上の胸に飛び込んだ。

 

 

 

「ん、まあ、そうだよな」

「この場合、俺たちのとこに来いってことにはならんのだよ」

「堂上が呼んだんだから、こうなることは決まってたでしょう」

「分かってたんだが・・・なんだかなぁ・・・」

「ま、笠原が喜んでるならいいんだけどな」全員がうんうんと頷いた。

 

 

 

郁は堂上の胸に顔を埋めて「きょーかんの匂いだぁぁ」と恥ずかしいセリフを吐いた。

堂上が真っ赤になったところで田所がやってきた。

「お取込み中お邪魔するよ」

「お!田所、今回はなかなかなものだったなぁ!」

「あはは。相変わらずだね、玄田は。ちょっと大変な思いもしたが、お前の可愛い部下のお陰で大事には至らなかったよ。助かった」

 

田所の言葉に、関西の防衛部員が訝しんだ表情を見せた。ヒソヒソと話す輩もいて、進藤たちが眉を顰める。

「言いたいことがあるならハッキリ言え」

「そうだな。どうも関西の防衛部は陰口が過ぎるようだ」

「俺たちがここに到着して体制を整える間、結構聞こえてきてたぞ?笠原のうわさ」

「え・・・」

郁が青い顔を上げた。それを合図に、堂上は郁の背中に回していた腕に力を入れ直し「大丈夫だ、気にするな」と耳元で囁いた。

 

「ま、今のこの状況で、笠原さんが誰を想ってるかなんてことは一目瞭然だろうけど。そうでなかったとしても、関西の上層部に取り入ってるとか妄想の域を越えないよね」

「笠原が防衛員として仕事が出来るのは、関東でそういう教育をされてきたからだ。それは基本中の基本であって、自己評価を上げるためのスキルじゃないぞ」

「そんなことも分からないようじゃ、関西防衛部の評価は地に落ちるなぁ」

進藤や小牧たちの擁護によって、居た堪れなくなったのは関西の防衛部員だけじゃない。田所もまた、恥ずかしいことこの上ないと言って頭を下げた。

 

「玄田、この通りだ。分かっただろ?俺がお前の育てた隊員を欲しがった訳が」

「ああ。予想より酷いもんだがな。こんなことなら、笠原じゃなくて新人指導教官でも寄越すんだったなぁ」ニヤッと嗤った。

「いや、笠原さんも立派に立ち回ってくれたよ。二年目とは思えない。ホントに、玄田は人を育てるのが上手いな」

「ああ、コイツを育てたのは堂上だけどな」

いつまでも抱き合っている二人を横目に、玄田と田所はククッと笑い合った。

 

「そういう訳で、笠原一士!」

「は、はいっ!」

田所に呼ばれて飛ぶように堂上から剥がれた。

 

「黙っていたが、君は関東特殊部隊所属で一年間の研修中だ」

「・・・は?」

「数年の異動と言った方が、腰を据えて関西での存在意義を考えるだろうからと、玄田の意見に従ったんだが。すでに君の働きは我々に影響大であることが分かった。残りの期間も変わらずに関東の流儀を教えて欲しい」

 

田所の言葉に驚いたのは郁だけではなかった。堂上も小牧も手塚も、関東タスクの諸兄たちも口をあんぐりとしている。

「あ、あたし・・・異動したんじゃないの?」

「一年間の研修だと?」

「あと半年足らずで、関東に帰って来るってことか?!」

 

「・・・うっそぉぉ・・・きょーかーーん!」

 

驚きと嬉しさが入り混じって、郁の感情はぐちゃぐちゃだ。それは涙となって表現された。

「また、お前は・・・」

呆れともとれる口調だが、堂上の表情は穏やかだった。郁の頭をぽんぽんと撫でると、そのままふわりと抱きしめて「あと半年、頑張れ」と自身の肩をハンカチ代わりに差し出した。

 

 

 

「ああ、甘い、甘い」

 

 

進藤のボヤキがロビーに響いて、関西の隊員たちが苦笑いを見せた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

笠原へ

 

 

俺たちは関東で鍛えて待ってるから

早く帰って来いよー!

 

 

笠原が居ないからって掃除をサボるようなことはしない!

笠原が帰ってきたら褒めてもらえるように磨くぞ!

 

 

旨いコーヒーが飲みたい!!

笠原、早く帰ってきてくれ!!頼む!!

 

 

隊長が、進藤さんが、堂上が、すごく寂しがってるぞ!

いや、タスクの皆が寂しいって言ってる。

帰ってきてくれー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ」

 

何度目だろう。

郁は夕方まで警備していたホテルの一室で、ソファーに体を預けて関東の仲間たちからの手紙を読み返していた。つい先日まで、この手紙を読むのは寂しさから逃れる方法だったが、今は自然に零れる笑みが止まらなくなる。

明日から二日間が公休となっている郁は、何故か誰かからのご褒美でホテルの一泊を提案され、あれよあれよと部屋に押し込まれていた。

 

 

「なに笑ってんだ?」

郁のすぐ横に堂上が腰を下ろした。

「教官が持ってきてくれた、みんなからの手紙です。もう何度も読み返してるんです」

「・・・俺のもか?」

「はい。当然じゃないですか」小首を傾げて堂上の横顔を覗き込む。

「恥ずかしいから、本人の居る前では読んでくれるなよ」

「えー?どうしてですかぁ?あたしが一番欲しい言葉が書いてあるのにぃぃ」

堂上の申し入れに納得いかない郁は、頬をぷくりと膨らませて抗議する。

「膨れても可愛いだけだぞ」言って頬を挟んで潰してやる。ぷしゅーっと縮んだ郁は真っ赤になっていた。

 

「じゃあ、読みませんから。代わりに教官の声で聴かせてください」

「そうくると思ったんだ・・・」

 

溜め息を聞かせて堂上が郁に向き直ると、ソファーは緩く沈んで郁の体が堂上との距離を縮めた。そのささやかな勢いを利用して、堂上は掌で郁の頬を包み引き寄せ、同時に自分の顔を近づけた。

 

「離れているだけで何かに嫉妬する俺がいる。だから笠原――――

 

 早く俺の傍に戻って来い」

 

 

郁の瞳の中に自分が映っていることを確認して、じわりと涙が滲んできたタイミングで更に二人の距離をゼロにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教官――

 

堂上教官―――

 

 

 

胸張って関東に帰れるように

 

あと半年、笠原 励みます!!

 

 

でも、寂しくなった時は―――

 

 

 

 

 

「いつでも俺を呼べ。

 

 抱きしめに来てやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(完)

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comment iconコメント ( 25 )

2の続きでスグに甘甘なラブ話になるかと思いきや、郁ちゃんの活躍話が用意されていた!

あーーーーん😭
教官が、みんなが来てくれたァ~っ!!

「こいっ!」ですって!?
走り出す郁ちゃんから「やっ!」って、聞こえちゃったわ♡
ぎゅーって抱きしめてぇっ!!
早う早う
早う関東に!!
早く帰還せよ~!!
あ、その前に堂上さんとお泊まりをー!!

名前: aya@屋根裏部屋 [Edit] 2016-12-26 19:53

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名前: - [Edit] 2016-12-26 22:01

ayaさんへ

2で伏線いっぱい張ったから、回収が大変だったよ(;'∀')
しかも、大きな仕事になってしまって。
郁ちゃん、どうやって活躍させようか・・・と。

公衆の面前での抱擁は決めてたことだったんで、そこは満足なのだww
ただな・・・最後がな・・・・。
お泊りを書くか、悩んだぜ。
(いや、悩むこと無かったか。書けないんだもんw)

そこ、妄想で埋めてくれww

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-26 22:12

skyokosさんへ

ちょっと関西の防衛員をダメダメにし過ぎたかなぁ?と反省してたんですけどね。
関東の素晴らしさを再認識するのと、郁ちゃんが立派に育ってるってことも皆で確認できるようにって思ってたんで、関西の皆さんにはごめんなさいですww
関東に帰還するまでを書くつもりでいましたが、今は全然思いつかないのでこれにて。
でも、来年になったら分からないですね(*'▽')
自由に妄想していきたいと思います。
今年一年、本当にありがとうございましたm(__)m

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-26 22:17

ご褒美は?

今晩は😃人一倍努力しているから女の身で特殊部隊しているのに、認められない奴に限って陰口、妬みのオンパレード。応援で駆け付けた教官たちと行きもピッタリはサスガです❤無事に任務完了した、ご褒美のお泊まりはムフフ💏かな?あと少し関西で頑張る郁ちゃんに教官からの言葉は手紙と同じくらい宝物でしょうね💞

名前: torotan [Edit] 2016-12-26 22:27

torotanさんへ

もう、玄田隊長の一言に尽きると思います。
「堂上が育てた」!うんうん(*'▽')
だから使える隊員になってるんだもーん♪
そこ、愛情の成せる業だもーんww

ご褒美は・・・ごめんなさい、書けませんでした(笑)
誰か代わりに書いてくれ!と言いたくなるほど_| ̄|○
いや、皆さんの妄想力に期待しますww

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-26 22:32

No title

こんばんは。郁ちゃん、関西で大活躍ですね。関東タスクでの訓練の賜物!玄田隊長が褒めちゃうのがよーく分かります。そして育てたのは堂上さん!離れていても、有事の時は連携がすぐにとれる、さすがです。堂上さんが腕を広げて郁ちゃんが胸に飛び込むとこ、郁ちゃん可愛い♡手紙3、良かったです!

名前: うりまま [Edit] 2016-12-27 00:19

めちゃ良かった!

おはようございます。郁ちゃん頑張りました!頑張ってましたよね、言う人はどこでもいますから💢教官ところに飛び込むのいいですね❤泣いちゃう郁ちゃんが可愛い!異動ではないとわかって
手紙ていいですね!教官はここでとかヽ(≧▽≦)/また甘い❤手紙もうメモくらいしか書いてないなあと、お話すごく良かったです💕

名前: ぴー [Edit] 2016-12-27 10:05

待ってました!

実はひそかに続きが気になっていた手紙。超よかったです!!みんなの前での抱擁。ニヤニヤしながら促す関東タスクw
嫉妬や陰口にまけずに大活躍の郁ちゃん、成長してましたね。半年後には帰れるけど、その前にもいっぱい抱きしめてもらわないとね。まずはお泊り・・・💛

名前: ゲスト様♪ [Edit] 2016-12-27 11:50

ごめんなさ~い

待ってましたのコメントは私ですw
名乗り忘れました。

名前: shimoko [Edit] 2016-12-27 11:56

イヤーーーッ!!♡

こんばんは。読んだ感想は、タイトルです(笑)
どこの防衛部も業務部も…ハァですね。

名前: S.A [Edit] 2016-12-28 19:47

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名前: - [Edit] 2016-12-29 07:46

うりままさんへ

ありがとうございます♡
遠恋捏造で引っ張ったお話。
離してみたものの、書いてる私が辛くなるという…(笑)
やっぱり、堂郁は一緒にいてこそ♡ですね。改めて。
なので、再会したら甘々なんですww

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-30 03:03

ぴーさんへ

ありがとうございます♡
一人でよく耐えました・・・(/_;)ウッ
堂上さんは心配だったと思いますが。
みんなの目の前で教官に抱きつくってシーンだけ早々に決めてました(笑)
甘いの妄想してないと書けないくらい辛かったんだもん。。。

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-30 03:12

shimokoさんへ

あは♡署名ありがとうございました(*'▽')

ええ。私も続きが気になってたんです(笑)
「2」で伏線張ってたから、大筋はできてたんですけどね。
いつでも書けると思うと、後回しになったりします…。
(そんなお話が数本ありますww)
春に郁ちゃんが帰還するまでとか、何かエピソード思いついたら書きたいとは思うんですが。
思いつくのは朴念仁と天然無自覚娘のジレジレばかり(笑)
お泊りなんて夢の夢ですww

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-30 03:17

S. Aさんへ

雄叫び、ありがとうございます(笑)
その心の叫びは、最後の二人を妄想したんですね?
脳内妄想補完ということで、完璧に仕上がりました♡
めでたし、めでたし♪

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-30 03:19

nonorinさんへ

一気とか、ありがとうございます♡
離れてる方がお互いに素直になれそう?
自然と甘く仕上がってくれてて、むふふ♡でした。
さらに意識して甘くしようと試みましたが…一歩踏み込めず、残念!
ご自由に妄想してくださいませm(__)m

名前: 悠@c.you [Edit] 2016-12-30 03:23

No title

続きはいつだろうって密かに待ってました!もう一回シリーズ最初から読み直して桜でちょっと切なくなりながら,手紙では甘い二人でドキドキしました!ハンドシグナルで教官だとすぐにわかる郁ちゃんさすが!!甘々の二人が読めて今年が幸せに閉められそうです💕ありがとうございます🎶

名前: かれん [Edit] 2016-12-31 18:01

こんばんは(*^-^*)あけましておめでとうございます。今年も楽しく読ませていただきます。
桜と手紙すごくすてきでした!
何度も読み返しちゃいました(≧∇≦)b
教官の元に成長して帰る郁ちゃんが浮かびました!

名前: きみ [Edit] 2017-01-02 23:55

謹賀新年

明けましておめでとうございます。旧年中はありがとうございました。本年もよろしくお願いします。
こちらのコメントの書き方がいまだによく分かってないので、失礼がありましたらすいません。
それでは、また覗きにきます♪
明日から仕事始め、年末から家族全員完全なる風邪っぴき(笑)←しかないです~

名前: S.A [Edit] 2017-01-03 08:19

色んな意味でにやけました😍

しまった。
こんなに待ち望んでいた作品を今この瞬間まで読んでなかったなんて、私の大バカと反省しておりましたT^T ええ、新年一発目の反省会中。

郁ちゃんと教官が堂々とラブラブできて、ほんと安心した。離れ離れになった時は悲しくなりました、私。郁たんを関西に行かすなんて、悠さんのおバカちゃんって、暴言を吐きたくもなりましたが、関西の隊長が素敵なので帳消しやな😁

桜から読み直しですわ!またもや、癖になるシリーズをありがとうございます!寝不足😢

今年もワクワクドキドキラブラブ作品を楽しみにしています!
よろしくお願いします❤

名前: kiko [Edit] 2017-01-06 02:34

かれんさんへ

わあ!待っててくれた人がいました~~~\(^o^)/
ずっと心の片隅にあって、早く書かなきゃって思ってたんですけどね・・・。

「オニギリ」と言われた「桜」シリーズww
どうしても暗い話にしかならなかったのを無理矢理ハピエン路線にするために遠恋に挑戦!!
なんとか纏まってくれてホッとしてます(*'▽')
ちゃんと書ける腕があればね・・・お泊りも掘り下げられたんですけどね・・・ごめんねw
各自、脳内妄想で埋めてください♡

名前: 悠@c.you [Edit] 2017-01-10 12:25

きみさんへ

遅ればせながら、新年おめでとうございます\(^o^)/
今年もどうぞよろしくお願いします♡

がっつりエピソード捏造話ではありますが、自分でも結構気に入ってるお話♪
どんなことがあっても、最後は甘く仕上がってくれる堂郁が大好きだぁぁぁ(笑)

名前: 悠@c.you [Edit] 2017-01-10 12:46

S. Aさんへ

遅ればせながら、新年おめでとうございますm(__)m
本当に昨年は皆さんと出逢えて、楽しい一年でした。
今年も引き続き皆さんと楽しめたら嬉しいです(*'▽')
本格的に寒くなってきました。
体調に気を付けてくださいね!!
いつでもここでお待ちしてます♡

名前: 悠@c.you [Edit] 2017-01-10 12:49

kikoさんへ

むふふ・・・いつ気が付いてくれるかと待っておったぞ!(笑)
年末年始、忙しそうだったからね。お年玉になったかな?

「桜」を書いた時は、オニギリとかあって結構な反響だったなぁ(笑)
暗い話にしかならなくて、どうしようかと悩んだり。
思い切って遠恋にしてみたら、意外に甘くなった\(^o^)/
関西の隊長!いいでしょ~?(笑)オリキャラ史上五本の指に入るぜ♡

今年も妄想の海を泳ぎまくります!!
どうぞ(溺れないように)見守っててね♡

名前: 悠@c.you [Edit] 2017-01-10 13:00

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